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税理士 / 中小企業診断士 / イノベーション・コーディネーターとして働く中で田中慎が考えたこと・感じたこと税理士 / 中小企業診断士 / イノベーション・コーディネーターとして働く中で田中慎が考えたこと・感じたこと

2023.06.10

友だちから見た田中会計

僕らのうつわの大きさが、できる支援の幅やから。| vol.12


田中慎さんが立ち上げた「株式会社でかいうつわ」の取締役の一人、石井 規雄さん。中小企業診断士として様々な企業の支援をしながら、京都市ソーシャルイノベーション研究所(以下、SILK)ではイノベーション・コーディネーターを務め、伝統産業である茅葺きの会社の経営にも携わっているという、とっても忙しそうな熱い男です。石井さんはこの春、「結い経営株式会社」を設立。数々の苦楽を共にしてきた二人が、これからの企業支援のあり方について話します。

経験に頼らない支援ができるか

田中:石井くんは最近どんなこと考えてんの?

石井:この1年は方向性を決めずに迷走しながら、インプットを増やそうと思っていて。プログラミングとか生成AIとか、色々勉強してます。今の支援先をしっかりサポートしながら、これまでの経験にとらわれず新しい分野にも挑戦したいです。

田中:業務の幅が広いよね。士業は得意分野を絞った方が儲かるってよく言われるけど。

石井:確かに効率は悪いかもしれません。でも、企業さんは新しいことに挑戦し続けているのにこっちが学ぶことをやめたら、そのうち役に立てなくなりますよね。社会課題も企業の課題も変化していくので、これからは経験に頼らない支援ができる人が必要だと思います。同じような支援ばかりでは自分もおもしろくないし。


田中:支援先の企業が求めていることの本質が自分の経験の外側にあるって気づいた時に、どうするかが問われるよね。自分ができる支援に無理に当てはめてるんじゃなくて、ちゃんと課題に向き合えるように、引き出しはたくさん持っておきたい。

石井:全てを自分でやる必要はないですもんね。広く浅くでも知見を持っていれば、コーディネーターとして事業者さん同士をつなぐことで解決する場合も多いです。

田中:株式会社でかいうつわは「会社のうつわをでかくする」という理念を掲げているけど、そのためにはまず自分自身のうつわを大きくして、支援の幅を広げなあかんことに改めて気付かされて。そういえば、今度ホースコーチングのプログラムに参加することにしてん。和歌山のアドベンチャーワールドで、馬からコミュニケーションを学んでみる。こないだ運営会社の方と話す機会があって、めっちゃいい会社やった。

石井:馬ですか。新しい価値観に出会えそうですね!

支援する・されるという関係性を超えていきたい

田中:石井くんはどんな会社を支援したいん?

石井:社長がいい人かどうかが大事ですね。単純に、人として応援したいと思ったら、とことんサポートします。田中さんはどうですか?

田中:人柄以外で言うと、自分にしかできない支援のあり方がイメージできるところかな。他の税理士さんでも良いなら無理に頼んでもらわなくていいけど、必要としてくれる会社はなんとかしたいって思う。外からの支援には限界があることもわかってきたし、場合によっては会社の中にぐっと入り込んで、バックオフィス業務全体の改善に伴走したりもしてるよ。

石井:支援の幅を広げてきたからこそ、そういう状況が生まれるんですね。

田中:バックオフィス業務に踏み込めたのは、SOU-MU NIGHTをやってきたからやと思う。全国の総務の人たちから現場の声を聞かせてもらって、めっちゃ勉強になってるな。コミュニティ運営のたいへんさも味わいつつ、視野を広げてもらえてありがたいです。

石井:SOU-MU NIGHTは、一見すると慎さんが総務の人たちを支援しているように見えるけど、一方通行じゃなくてお互いに学び合う場になってますよね。もう、支援する側とされる側がいる時代は終わりつつあると思うんです。与える・与えられるっていう関係性を超えていかないと、表面的な支援で終わってしまう気がします。

田中:2018年にSILKでやった「働き方改革チャレンジプログラム」が、まさにそういう場やったと思っていて。

プログラムの様子

田中:僕らがそれぞれの会社に入って支援するんじゃなくて、参加企業7社の経営者と従業員が混ざり合って、対話することでお互いの学びが進んでいった。色々あって、始まる直前に石井くんと二人で「このままじゃまずいな」「どうしよう」ってかなり悩んだけど。

石井:あのかたちは喋りながら生まれましたね。もやもやした状態で話し始めて、途中で「ひらめいた!」「めっちゃええやん!」って。

田中:あのプログラムをやったことで、関係性を開くことの大切さを実感できた。縦の関係、横の関係に加えて、いわゆる斜めの関係ってすごく重要やんね。今までになかった価値観が入ってくるから、視野がすごく広がったと思う。そのイメージは色んな場面で意識するようになったな。

京都には社会的事業を支援する取り組みがたくさんある

田中:石井くんをSILKに誘ったのは僕なんやけど、なんで石井くんやったんかなって改めて考えていて。正々堂々と直球を投げられるタイプやからかなと思った。支援先にもチーム内にも、意見を真正面からはっきり伝えるよね。新しいメンバーを探す時って、自分たちにないものを求めてるんよな。

石井:誰にでも投げます。

田中:石井くんがおるから、僕は変化球も投げられる。考え方が似ていて動き方が違うから、補い合えるし、お互いに気づきや学びがあるんかな。

石井:SILKの話を聞いたの、なぜかケーキバイキングのお店でしたよね。他にも何人かいて。外に出て「甘いものいっぱい食べたし、焼肉食べたくないですか?」って言ったら、慎さんだけ付き合ってくれて。ここまでしてくれる人はなかなかおらんと思いました(笑)

田中:カウンターに並んで肉食べたな!懐かしい。田中会計とでかいうつわ、これからどうしていこうかな?

石井:会計って、これからどうなっていくんですか?新しい技術がどんどん出てきて、色んな影響が出ていそうですよね。


田中10年前から会計の仕事はなくなるって言われてきた結果、会計をちゃんと組み立てられる人がどんどん減っていて。地味な仕事やしね。でも一方で、どんな会社にとっても会計はすごく重要やん。極端な話、会計がわからない状態では起業しない方がいいと思う。そこをちゃんと伝えていかなあかんと最近思ってるねん。

石井:確かに。経理書類を見ると、「このやり方でよく今までやってこれましたね」と驚くようなケースも少なくないです。

田中:ITを活用して会計を強くすることで、会社全体を良くするような支援をしていきたいねん。特に社会的企業は、思いが先行して裏側の仕組みが追いついていないことが多いから。

石井:ITツールは使い始めがしんどいから、最初の伴走は大事ですね。回り始めたらすごく楽になるけど、そこにたどり着くまでに仕事が増える時期があるので、現場の人たちは既存のやり方を変えたがらない。

田中:せやねん。クラウド会計ソフト「freee」の導入支援をすると、最終的には作業の無駄が減って喜んでもらえるんやけど。これはもう伝え続けるしかないな。でかいうつわでは、会計やfreeeからスタートして、社会的企業に向けて色んな分野のセミナーを開けたらいいなと思っていて。石井くんは何のセミナーする?


石井:普段セミナーで話すのは、経営計画とか事業戦略まわりが多いです。戦略といっても、目の前の商品をどう売るかってことじゃなくて。どんな価値を提供したいのか、どんな人の役に立ちたいのか、を掘り下げることから始めます。そこがかたまってから、どう届けるかという戦略を練っていかないと意味がないので。

田中:いいね。やろう、それ!会計も、ノウハウじゃなくて考え方を伝えたいなと思っていて。システム思考と会計を組み合わせたい。出てきた数字に対峙した時に、投資をして、売上になって、っていう循環が動きとして見えるようになるイメージやねん。

石井:実践につなげていけるように、終わった後のフォローアップも考えていきたいですね。聞いただけだと、すぐに忘れてしまうし。

田中:京都には社会的事業を支援する活動や仕組みがたくさんあるから、そのネットワークを見える化できたらいいよね。経営者の支援もするし、右腕人材を育てる風土も育てていきたい。でかいうつわの役割はまずそこかな。

石井:ソーシャルに力を入れる支援機関が増えてきた今、自分たちはまた違うことを始めなあかんっていう話はよくしますよね。同じことをしてもあまり価値がないし。企業の取り組みはもちろん、公的機関や金融機関の取り組みともつなげながら、でかいうつわらしい広がりを作っていけそうですね。楽しみです。

田中:今日もいい感じに“壁打ち”してもらったわ。ありがとう!

満を持して「友だちから見た田中会計」に登場してくれた石井さん。企業支援の話題はもちろんのこと、茅葺きやトライアスロンなど気になるテーマをいっぱい持ってはるので、今後もたびたびブログに出現してくれるかもしれません。石井さんと話してみたいという方がいたら、すぐにおつなぎしますので、ぜひお声がけください。

話に出ていた田中会計のセミナーは、7月からスタートできるよう鋭意準備中。またお知らせいたします!

協力:石井 規雄さん facebook

参考:京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)京の企業「働き方改革チャレンジプログラム」株式会社でかいうつわSOU-MU NIGHT
文・写真:柴田 明

2023.06.10