

2025.12.02
税務会計
「会社をつくったはいいけれど、定款って正直ほとんど読んでいない…」そんな声を、20〜30代の若手の起業家の方から税理士としてよく耳にします。
最近はfreee会社設立などのサービスを利用して法人を自分でつくることも多いと思います。
実はこの“読んでいない定款”こそ、無用なトラブルを避け、会社の成長スピードを加速させるための重要な羅針盤になります。
そもそも定款は、会社の憲法のような存在です。
設立時のひな形のままにしている方も多いですが、事業が動き出してから「資本金をどう動かす?」「役員をどう変える?」「株をどう扱う?」といった場面で、定款がボトルネックになるケースは少なくありません。
特にスタートアップは意思決定が早い分、「後から修正しよう」と放置すると、金融機関・投資家・専門家とのやり取りで時間を失いがちです。
では、税理士の視点で“最低限ここだけは押さえておきたい”定款の確認ポイントを解説します。
まずは「事業目的」。広すぎると実態がぼやけますし、狭すぎると新規事業が目的外となり、許認可や金融機関対応で不利になります。近年は定款の柔軟化が進んでいるため、将来展開する可能性を含めた文言にしておくと、ピボットしやすい会社設計が可能です。
次に「機関設計(取締役・監査役・株主総会などの運営ルール)」。特に若い企業では、代表一人で機動的に動きたいケースが多く、役員の人数や任期を無駄に長くしていると、変更登記に手間とコストが発生します。また、決議方法の規定があいまいだと、株主との認識ズレが起こりやすく、後の紛争リスクにつながります。
さらに重要なのが「株式の譲渡制限」。ここを放置したままスタートアップの仲間が増えたり、出資を受けたりすると、「誰がどれだけ権限を持つのか」が曖昧になり、成長局面で大きなトラブルを生みます。特に最近は小規模M&Aや少人数私募債など、資本政策まわりの意思決定が以前より早く、かつ複雑になっています。定款が整っていない会社は、投資家からの評価も下がりやすいのが実情です。
税理士として感じるのは、定款を定期的に見直す会社ほど、経営判断がスムーズで成長速度が速いということです。たとえば、事業目的の追加を早めに行っていた企業は、新規サービスの契約・補助金申請・借入などで“余計な壁”が生まれません。一方、目的が古いまま放置していた企業は、チャンスの瞬間に手続きで足止めされてしまいます。
実際に顧問先でも株式に関して種類株式を積極的に活用することで柔軟な資金調達が可能になったケースもあります。
まずは、自社の定款をざっと読んでみることから始めてみてください。そのうえで、事業目的、役員任期、公告方法、株式の扱いなど、気になる点を税理士や専門家に相談すると、修正すべき優先順位が明確になると思います。
定款は“作ったら終わり”ではなく、成長する会社のアップデートに合わせて進化させるべき書類。ぜひ一度目を通してみてください!
2025.12.02