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税理士 / 中小企業診断士 / イノベーション・コーディネーターとして働く中で田中慎が考えたこと・感じたこと税理士 / 中小企業診断士 / イノベーション・コーディネーターとして働く中で田中慎が考えたこと・感じたこと

2025.08.18

税務会計

会社をつくったときの司法書士の報酬から源泉徴収をしてますか?

会社をつくったときの司法書士の報酬からの源泉徴収会社を立ち上げたばかりの起業家の方から、「司法書士の先生に報酬が10万円と言われたので、そのまま振り込みました」という声を耳にします。

また、顧問先であれば私たちの方から「会社設立を依頼した司法書士さんの請求書を見せてください」とお願いします。

司法書士への報酬には「源泉徴収」が必要です。またその計算方法は他の士業に対する報酬とは異なります。

知らずに全額を支払ってしまうと、会社側に源泉徴収漏れのリスクが発生してしまうので注意しましょう。

なぜ源泉徴収が必要なのか

個人である司法書士・弁護士・税理士など、一部の士業の報酬は、支払う側が源泉所得税を控除し、国に納めることが法律で義務付けられています。会社が支払う金額は「源泉徴収後の金額」となり、差し引いた税金は翌月10日までに税務署へ納める必要があります。

司法書士の源泉徴収税額の計算方法

源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額は、1回に支払われる金額から10,000円を差し引いた残額に10.21パーセントの税率を乗じて算出します。

この10,000円を差し引くというのが司法書士だけなので注意が必要ですね。

計算例

司法書士への報酬:100,000円(税込110,000円)

  1. 報酬部分を分ける → 100,000円(消費税10,000円は対象外にできる)

  2. 源泉徴収税額を計算 → (100,000円 − 10,000円) × 10.21% = 9,189円

  3. 実際の振込額 → 110,000円 − 9,189円 = 100,811円

  4. 差し引いた9,189円は、会社が税務署へ納付

つまり、司法書士に渡すのは「100,811円」、差し引いた9,189円は翌月10日までに会社が税務署に納付する、という流れになります。

会社設立時に税理士がいないと気づきにくい

よくあるのが会社設立をした当初は税理士がいなかった場合。

起業家は司法書士の請求書通りに源泉所得税を控除した報酬は支払っているけれど、税務署への納付を忘れていることがあります。未納付の税金と場合によっては加算税を負担することになりますので注意してくださいね。

源泉所得税の納付漏れは税務調査での指摘が多い

税務調査があった場合、特に報酬関係の源泉所得税の徴収漏れ、納付漏れがないかは必ずといっていいほど確認をされます。源泉徴収すべき報酬について徴収漏れを指摘された場合、もう先方に請求できるような関係でなければ会社が負担する必要があります。

今回のような設立時の報酬だけではなく、継続して支払う報酬について徴収漏れがあると3年分をまとめて払うようなこととなり、資金的にも負担が大きくなってしまいます。

今回は司法書士の報酬に対する源泉徴収についてのお話でしたが、源泉所得税は起業家にとって避けて通れない税務の基礎です。後のトラブルを未然に防ぎ、安心して経営に専念できるようにしましょう!

【参考:国税庁】

No.2801 司法書士等に支払う報酬・料金

 

2025.08.18